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某所連載中の二次小説に対する、腐女子な愛を叫ぶ場所
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甘党閣下とヴァレリー&リューネブルク。第130話の後。ながーい9月30日の午後。
ちなみに130話を読んだ後でうきうきしていた妄想なので、甘党閣下は別人ですヨ。
……だから、甘党閣下視点の話には手を出したくないのだけども、まあこれもひとつの勘違い、ということで御容赦を。
あ、食堂妄想についてはひゅーげる様ありがとうございましたw




「閣下」
ケスラーを帰し、一息ついて応接室から出たとたん、副官であるヴァレリーが近づいてきた。
何か急な用件でも出来たのだろうか。
「急ぎですか? これからアレの処理をしなくてはなりませんが」
ちらりと見た執務机の上には、決裁する書類や報告書がうずたかく積まれている。
朝から色々とありすぎた。正直、今日はもうこれ以上の面倒ごとは勘弁して欲しい所だが。
「いえ。ですがその前に昼食を用意いたしますから、食堂の方へ」
「ああ、もうとっくに昼を過ぎていましたね。私のことはいいですから、フィッツシモンズ中佐は休憩を取ってきてください」
昼どころか、もう午後もとっくに回っている。
食欲などあまりないし、話疲れたから、ココアでももらえればそれで……
「閣下、はっきりと申し上げますが、お顔の色が悪いです。休憩なさってください」
眉を顰めてヴァレリーがこそりと囁いてきた。
「……わかりました。ですが」
「中庭に席を確保させておきました。中からは死角になる位置です。少しでも何かお食べになってください」
心配そうな顔に、こちらも我侭をいえずに頷いた。
実際、将官用の食堂では量が多すぎるしコッテリ過ぎる。かといって、佐官用の方に降りれば、いらない騒ぎが起こることも既に知っている。
何よりコチラを伺う視線がうっとうしい。食事をしながら見世物になる気分はいいものじゃない。それをわかった上でのヴァレリーの配慮はありがたい。
「では軽めのものを。それとココアですね」
「もちろん手配済みです」
すまして言うヴァレリーに、クスリと笑みがこぼれる。
本当に有能な副官になってきた。
最初はもちろん同盟と帝国の違いに戸惑うこともしばしばだった。
だが、持ち前の負けん気か才覚ゆえか、仕事を覚え始めたら後は早かった。
同盟でもオペレーターという職に付いていただけあって、必要な基本は既に身についていたこともあるだろう。
いつの間にか、同僚の女子職員たちにも受け入れられ、その気風の良さからお姉さま呼ばわりまでされているらしい。密かに憧れている男性下士官達だっている。艦隊司令官達にだって、最初はともかく今は認められている。
ヴァレリーは自身の努力と力で、今の位置を確固たるものにしているのだ。
もう亡命者とはいえ、俺の庇護など必要ないかもしれない。
それでも、ヴァレリーを自身の傍から離さないのは俺自身のエゴでもあるのだろう。

なるべく人目につかないルートで中庭まで降りれば、其処にいたのはリューネブルク中将だった。
中庭の東屋のようになった場所でひらりと手を振っている。
いつも何だかんだと理由をつけてはこの宇宙艦隊司令部に顔を出すヤツだが、実は本当に暇なのか?まさか、わざわざ呼び出したなどと言うことはあるまいが。
ヴァレリーに疑問の視線を向ける。
「閣下が応接室にいらっしゃるときに来たもので。ちょうど良いのでここで待っていて頂きました」
「そう、ですか……」
中佐が中将をあごで使うなどとは、俺は聞いていないぞ。聞かなかった。
それでなくとも、最近ヴァレリーは時間を見つけては装甲擲弾兵の練兵場に通って護身術と射撃を習っている。リューネブルクに言わせると、かなり筋がいいらしい。
ただでさえ頭が上がらなくなりつつあるというのに、力でも敵わなくなりそうだ。中佐に負ける元帥か…………まあ、勝とうとも思わないが。
「何かありましたか?」
隣に腰を下ろしながら一応たずねる。本当に何かがあったとも限らないからな。
「いえ、ただのご機嫌伺いですよ。それよりも昼食……というには少々遅い時間ですが、食事をどうぞ。冷めてしまいます」
「ありがとう」
俺とヴァレリーの前には軽食のトレイ。リューネブルク自身の前にはコーヒーがある。どうやら護衛の代わりに此処で付き合う気らしい。
……本当に暇なのだろうか。そもそも彼ら装甲擲弾兵は有事でなければ訓練が仕事のようなものだが。
「中佐はあまりご機嫌麗しくないみたいだな。お肌に良くないぞ」
「まだ若いですから。御心配には及びません」
「と思っているうちにすぐ30代半ばになってだな……」
「中将、それ以上おっしゃるとセクハラで訴えますよ」
ヴァレリーはサラダにフォークを刺しながら、笑い話のような恋の鞘当や、どこかの大佐の飼い猫の話やら、ごく軽い会話をリューネブルクと続ける。
こちらが会話に混ざらなくても良い様に、ただ明るい空気を作ることだけを気にしているのが判る。それを聞きながらのんびりと食事を取るのは得がたい幸福の時間、だろうな。
この二人が、目の前で、笑っている。
それが、俺にとってどれだけの救いになるか、この二人自身は知らないだろう。
正史……俺の知っていた原作では、この二人は既に死亡していたはずだった。それが覆されたのは、俺自身がその流れに介入した結果でもある。
たかが原作知識をちょっと持っただけの人間ひとりで、世界の大きな流れがどうにかなるなどと、傲慢なことは欠片も思っていなかった。その流れにどうやって乗り、生きていくかが考えるべき事だったはずだ。
ところが、今の俺は元帥で宇宙艦隊司令長官になっている。
始まりのサイオキシン事件から、今までにどれだけの誤算があっただろうか。
どれだけの人の人生が変わったのだろうかと考えると、背筋を恐怖が這い登る。
良くなったのならばいい。
けれど、ラインハルトのようにその人生に翳りを落としてしまっているとしたら。
アントンのようにブラウンシュバイク公の元に居続ける選択をしてしまったとしたら。
艦隊司令官たちも、俺より原作のラインハルトの元でのほうが、よりその能力の揮い甲斐はあったかもしれない。
何より、俺は俺が生き残る為に、何千万もの人間を――同盟でも帝国でも――殺してきた。
帝国を護る為でも、家族や親しい人を護る為でもなく。
ただ俺が死にたくない――――それだけの為に。
父や母が願ったように、それに俺が誓ったように、生きて幸福になる、という目的の為に。
その選択に後悔は無い。
けれど、知ってしまっている『原作世界』の幻想は、俺をこの先もずっと苛み続けるだろう。最善を尽くしたつもりで、より多くの血を流してしまうこともあるだろう。
だからこそ、この二人は……俺の傍にいる、と選んでくれたイレギュラーなこの二人だけは、何の遠慮も苦痛も感じることもなく接していられる。
少なくとも、原作よりは幸福な道を歩んでいると、俺自身を騙すことができる。
…………俺自身の往く道は、既に幸福や平穏とは程遠くなってしまっているけれども。この二人もそれに否応なく巻き込まれてしまうだろうけれども。
俺に残された、数少ない大切なもの、だ。

どうか、彼らにとって幸せな日々が続くように。
そのためにどれだけの血に塗れ様とも、覚悟は既にできている――


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いつもかなり隅っこの茨の中を1人で爆走します。
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