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某所連載中の二次小説に対する、腐女子な愛を叫ぶ場所
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陛下祭り!……のつもりだったんだけど何だかなあ?
ちょっと趣味に走りすぎました。
若かりし頃のグリンメルスハウゼンと陛下。
長くなりすぎたので切って切ってダイジェストみたい……しょんぼり。




「陛下……」
そう呼びかけ、膝を付く。
こんな日が来るとは私も、おそらくは陛下も思っていなかった。
少し青ざめた顔で振り向いた陛下は、小さく口の端を歪めた。

「そなたが、私を苦しめるのか」

吹き抜けた一陣の風に、強く薔薇の香りが舞った。




初めて出会ったとき、私は凡庸な一武官に過ぎず、殿下もまた大人しげな子供だった。
優秀な兄と溌剌とした弟に挟まれた凡庸な次男。
ソレが周囲の評価で、私もそうなのだろうと思っていた。
警護の人員に加えられたとき、出世コースでは無いが、命の危険も少ないと安心したものだ。
グリンメルスハウゼン家はコチラも優秀な兄が継ぐだろうし、私も次男坊という気楽な身だ。
適度に真面目に、適度に手を抜いて、それで問題は無い。
何をしても凡庸で、これといって特技があるわけでもない。
体を動かす方がまだマシだ、という選択で武官になったに過ぎない。
宮廷警護で日がな一日ぼんやりと立っていると、暇つぶしにできることは非常に限られてくる。
おかげで趣味の1つが人間観察になった。
目の前を通り過ぎていく高官や貴族。
コチラがまるで人形でもあるかのように、存在を無視して声高に話していく。
先ほどまでAという人間の悪口をBに話していたCが、翌日にはBにAの悪口を言う。さらにAとBはそんなCをこき下ろし、いつの間にか全員宮廷からいなくなる。
そんなことがごく当たり前に行われる日常。
つくづくそんなものに巻き込まれるものでは無いな、と思ったものだ。
そうして適当に過ごしていたからか、無口で真面目に職務に励むと思われたのか。
高位貴族にありがちな傾向として、のんびりし過ぎて出世欲も薄いと思われたか。
なぜか皇帝陛下の御子であるフリードリヒ殿下の傍警護に任命された。
要するに、毒にもクスリにもならない、と判断されたということだろう。
結構なことだ。
少なくとも廊下に立ちっぱなしよりは変化のある仕事だろうから。
「本日より、殿下付きの護衛を拝命いたしました。リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン中尉であります」
形だけは綺麗になった敬礼をしながら、着任の挨拶をする。
ソレを興味なさげに見た少年は、そのままふらりと庭に出て行ってしまった。
「気にするな、いつものことだ」
「はぁ……」
先任武官がこちらの肩を慰めるように叩く。
護衛など所詮空気のようなものだ。皇族の方々はコチラのことなど気にも留めないし、コチラも相手に意識してもらおうとは思わない。
リヒャルト皇太子のように厳格さを求められるわけでなく、クレメンツ殿下のようにコチラを振り回すわけでもない。
まあいい職場なんだろう、と私は再び人間観察の趣味に没頭することになった。
…………そう、主に警護対象である、フリードリヒ殿下に対して。


私だから気が付いた、などという気は無い。
誰も彼も、殿下自身を見ようとしていなかった、ただそれだけのこと。
周りの侍従たちが視線をはずした一瞬、殿下の顔によぎる感情の矛盾。
明らかに理解を示している瞳で、けれど分からないと家庭教師に嘯く言葉。
一つ一つは些細な事ながら、積み上げ考えれば、判りやすい。
この殿下は、本当の姿を見せてはいないのだ、と。
それが分かれば、今度は何故だろう、と考えて観察する。
学力……リヒャルト皇太子に及ばず、の振りをする。
積極性……クレメンツ殿下に及ばず、の振りをする。
上に立つものとしては可もなく不可もなくの容姿、をあえて飾り立てることもない。
趣味といえば、与えられた宮の庭を散策すること。雨の日は読書か音楽鑑賞と手を煩わせない。
そして、周りのものを極力不快にさせないような言動……興味を抱かせない、とも言い換えられる。
自分から空気になりたいのかといわんばかりの行動だった。
それはまだまだ子供であるはずの年齢には似つかわしくなく、けれど皇族として求められるものではあったかもしれない。
この奇妙な精神構造に私はさらに興味をそそられた。
おそらく熱心に見つめすぎたのだろう、殿下も私に気が付いた。
何時しか私は侍従武官へと繰り上げられたが、お互い何も告げることはなくずっと傍に在り続けた。
言葉はなくとも、何かが其処にはあったのだ。


そんな穏やかな日々を崩したのは、皇位継承争いだった。
なんと醜いモノであることか。
その煽りを食らってか兄が死に、子爵位は私に回ってきた。
侍従武官を退くときも大公殿下は何もおっしゃらなかった。
ただ、軽く頷いて寂しそうな笑顔を見せた。
周りには味方など居ない。居るのは大勢の他人だけだ。
ただ争いたくない、それだけを望んでいると今では分かっていた。
やりきれない思いを抱え、宮廷の廊下を歩いているとき、聞こえた汚い言葉達。
明らかな嘲笑と下らない自尊心で他者を蔑むそれが、殿下に向けられている。
思わず足を止め、笑いながら歩いていく奴等をじっと眼に刻み込んだ。
なぜだろうか、どうしても許せなかった。
脳裏にちらちらと殿下の顔が浮かんでいた。
殿下から笑顔を奪うのはあいつらなのだ、と湧き上がる強い衝動。
幸い、時間は幾らでもある。暇に託けて、噂話の一つや二つ、ちょっと宮廷で流すことなど造作もない。
そう、お前達も少しは苦しめば良い―――


――皇太子リヒャルトは父帝への謀反の罪で死罪、彼の廷臣六十名も処刑。
新皇太子クレメンツは故リヒャルト皇太子に冤罪を着せたとして廷臣百七十名が粛清、皇太子自身も”偶然の事故”により爆死。

――フリードリヒ4世戴冠。


その結果は、私の予想を超えた。
戴冠式を終え、祝賀会も一通り終わった後で私は皇帝陛下に目通りを願った。
通された先は小さなバラ園。
殿下の……陛下の気に入りの散策コースの1つだ。
そこで待っていた陛下は、此方の肺腑をえぐる一言を零したのだ。
「何故、お前が私を苦しめるのだ」と―――


「私は……予は皇帝になどなりたくは無かった」
「御意にございます」
「…………ソレを誰よりも知っておったのも、そなただろう」
「御意に……」
苦しげな、激情を押さえ込む声音に、ただひたすら頭が下がる。
私も陛下も望まなかった結果が重く圧し掛かる。
誰を、何を恨むべきか。
オーディンか、呆れるほど愚かだった殿下たちか、その取り巻きたちか。
殿下を愚弄されたから、と暗い欲望を抑えきれなかった私自身か。
「そなたも、苦難の道を歩むことになるぞ。一度穢れた手が、綺麗になるはずも無い」
「陛下の御為ならば、構いません」
どの道、貴族などというものは綺麗でいられるはずも無い。
他人の生き血を啜る寄生虫だ。
「予の為、か…………そうだな、全ては予の責任であろう」
そっと赤い花弁を撫でる指先が、震えていた。
陛下を苦しませているのは、悲しませているのは全て私の所業だ。
それを陛下の為といって、私は自身の行動を正当化した。
卑怯だと、ふざけるなと詰って欲しい。
せめて、怒りを私に向けてくだされば、幾らでもどんな事でも受け止める。そのくらいしか贖罪の手段が無いのだ。
「リヒャルト、予は『正しい』皇帝になどならない」
「陛下?」
「予は帝国が嫌いだ。皇帝の位等要りはしない。
ただ穏やかに日々をすごしたかった……それすら認めぬこの国がどうなろうと構わない。
すでにこの国は腐り落ちる寸前だ。それを止める努力などしてやるつもりはない」
淡々とした、それだけに本心であろうと分かる口調に背筋に冷たい汗が伝う。
「予を軽蔑するか?」
「いえ、決して」
応えは反射的に出て、そしてそれが紛れもない本心だと後から心が追いついた。
「予に求められているのは、皇帝という椅子に座る人形だ。何かを成そうとすれば、誰かにすぐ挿げ替えられるだろう」
それでもいいが、少しばかり腹立たしいな、と陛下が笑う。
「予は何もしない。唯あるがままに、全てを高みから見ているだけ…………そのことで、流れる血もあろうな」
このバラ園のように、赤い血の花が幾つも咲くだろう。
年を追うごとに増えていくだろう花々と、同じ数だけ血の花も増えていく。
それは既に確定した未来。
「……リヒャルト、この国は何処へ行くのだろうな」
その呟きは、静かにバラ園の中に沈んでいった。



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エピローグ
「あれからどれくらい経ったかの?」
「さて、既に臣はボケ老人ですからなぁ。年月など瞬きの一瞬のようにしか感じませぬよ」
非公式に見舞いに訪れた陛下を相手に、笑う。
既に体を起こすことも辛いが、それでも口だけは回ってくれるので助かる。
寝台に上半身を起こしただけという甚だ失礼な姿だが、陛下も気にせず傍らの椅子に腰掛けている。
余人を交えない会話は、気持ちだけでも昔に立ち戻らせてくれる。
「ボケ老人?」
「ヴァレンシュタインが、そう言いましてな……ボケ老人では無いのに、どうして?と」
面白そうに笑う陛下を見るのは久しぶりだ。
興味深げに眼を瞬かせたのを見て、そのまま続ける。
「あれは、面白い男です。我々とは……帝国に生きる誰とも違う。さぞかし理解され難く生き辛い事でしょうな」
イゼルローンに向かう前に呼び出した時のことを思い出す。
ヴァンフリートでの功績を知った陛下が、私の花道を作ってくれた礼にか、彼に貴族位を与えることを打診してきた。それをあっさり拒否して見せた彼が、あのバラ園の陛下となぜか重なって見えた。
「貴族や帝国など、彼にとっては既に滅びるもの、なのでしょうな……無くなるものに、一片の価値もないのは自明の事」
「ほう……無くなるか」
「彼はそう考えておるようです。それと同じくらいに、わしともう会えない、と確信しておったようですしな」
あの時には、まだここまで体調を崩してはいなかった。
けれど屋敷から出て行く前、辞去を告げ踵を返すその一瞬。
彼が見せた瞳は、確かに死に行く者への憐憫と哀惜を湛えていた。
長い間人間観察を続けてきた眼にかけて、間違いない。
あれは、確かに私の死期を知っていた。
何故かはわからないが、あの慎重な男が信ずるに足る根拠があったのだろうと思う。
「ふむ、先の世を見る、か……面白い男よな」
「預言者や占い師など信じるつもりはありませんじゃろう?」
「そんなものは毛頭信じぬが、そなたのヒトを見る眼だけは信じる。この世の何よりも、予自身よりも、な」
真摯な眼が向けられる。
これだけは少年時代から変わらない。私だけに下さる陛下の大切な、心のひとかけら。
「光栄です……マイン・カイザー」


明くる日の早朝、皇帝のバラ園でも一際鮮やかな冬薔薇が一輪、静かに散り落ちた。
つくも 2010/12/20(Mon)01:28:00 編集
Re:蛇足
……だったかなあ?と悩んで分けてみました。
ヤバイ。陛下とグリンメルス爺ちゃんならシルバージュネっぽいのに一直線だ!(笑)
【2010/12/20 01:45 つくも】
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いつもかなり隅っこの茨の中を1人で爆走します。
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