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某所連載中の二次小説に対する、腐女子な愛を叫ぶ場所
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たぶん、第81話のちょい前辺り?でシュタインホフ元帥と、名前は無いけどその副官。1人位はいるでしょ、と言うことでご容赦を。
読みたいと言われれば、とりあえずネタになるかどうか考えてしまうのは書き手の性分。
KAIRI様にご満足いける品かは分かりませんけど、今の私にはこの程度の妄想で精一杯……。





「追い返せ」
『で、ですが閣下……』
一言で切り捨てられ、躊躇うような声がヴィジホンから返る。
受付程度もろくに出来ず上のものの言葉に逆らうなど、あいつは今度飛ばすか。
「いいから追い返せ。小僧には会わん」
ぷつ、と容赦なく通話を切る。
替わりに監視映像のうち、玄関前のものを選び出しクローズアップした。
黒髪で小柄な人影が映る。
穏やかな笑顔に、華奢な肢体。その姿からは想像もできないほどの責務と、それをこなすだけの才覚を秘めた存在。
先ほどの受付の士官に返事を貰ったのか、彼は一瞬だけ綺麗な眉根を寄せ、けれど穏やかに頷いて踵を返す。
周りでそれを見ている人間の反応を素早く見て取り、彼の姿が画面から出て行ったところで映像も元に戻した。
「……よろしかったのですか、閣下」
余り機嫌の良く無さそうなシュタインホフ元帥にそっと声を掛ける。
「お前まで、小僧に媚を売れ、と言うか?」
「いえ。ですが、彼も宇宙艦隊副司令長官となりました。今までのような態度をとるのは、これからの職務上も影響があるかと」
じろりと睨まれるが、今更その程度で怖気づく様ではこの人の副官は務まらない。
統帥本部長という肩書きを背負うに足る人物だが、少々偏屈で頑固なところがある。
彼――エーリッヒ・ヴァレンシュタインとは、一度ならず関わりが有ったせいで、余り素直な態度が取れないようだ。
「あの小僧は憲兵隊と懇意だろう。なのに、このうえ情報部とも近づくとなったら、余りあちらはいい気はせんだろうが」
なのに、のこのこ顔を出しに来おって、と呟く。
さらに「今やるべきなのは艦隊の再編だろうが、こんなところに来る時間も惜しいはずだろうに分かっておらん」等と止め処なく続く。
なるほど、せっかくの味方を減らすことは無い、という親心か。素直じゃない。
此処ですげなく帰された、と言う話は憲兵隊にもすぐに伝わるだろう。
お互いに仲が悪いのは既に性根に染み付いている。
相手の動向を探るのも日常茶飯事だからな。
微笑ましい気持ちでいたら、胡乱そうに睨まれた。
「……何か、間違った納得をしておらんか?」
「いえ、そんなことは。閣下のお心に感服しておりました」
余り若い者が台頭するのを快く思われないだけに、彼に対しても含む所があるのだと思っていたから、これは本心だ。
「わしはあの小僧は嫌いだぞ」
「はいはい、分かっております」
処理済の書類を抱え、適当に返す。そして新たな書類を目の前に置く。
一瞬、親の敵を睨みつけるような目をして、元帥は溜め息をついた。
「分かっておらんだろう。わしは本当にあやつが嫌いだ」
おや、少し休憩か。まあ、朝からずっと続けていたし、その位は良いだろう。
手元のコンソールで飲み物を手配しながら返事をする。
「まぁ、彼には我々も色々としてやられましたし。閣下が気に入らないと言うのもわかりますが」
「そういうことではない。…………いや、それもあるが」
ふと声を落とした元帥は椅子を回し背後の窓に向かう。
統帥本部長執務室の広い窓の外、晴れた空とオーディンを見下ろす視界が広がる。
穏やかないつもどおりの光景。
仕事に疲れたとき、元帥は何時もそれを見る。
光をはじく柔らかな緑。綺麗に整えられた街並み。遠目では分からないが、楽しそうに歩いているだろう人影。
我々がすむ闇の世界とはちがう、光に溢れた穏やかな人々の光景。
そちらを見ながら、ぼんやりと元帥は続けた。
「あの小僧は確かに才覚はある。だが、自分でそれの使い方をまだ知らん。
嫌ならさっさと退職すればいいものを、下手に甘いから良い様にミュッケンベルガーやエーレンベルクに利用されるのだ。
たかが20を幾つか過ぎただけの相手に、帝国の命運を掛けようなどと不甲斐なさ過ぎるし、情けないとは思わんのか、奴らは」
そう、あの人望や能力から忘れがちだが、彼はまだ若手もいいところの将官なのだ。
ましてや、平民出身。
それがどれだけの影響を、この国に及ぼすか。
貴族達の蠢動。フェザーンの動き。そして同盟。
この国のみならず銀河中が、彼が居る事で何かが動き始めた感触がある。
情報部員として磨かれた嗅覚が、嵐の目は彼だ、と示す。
「それだけならまだしも、あの小僧本人の覚悟が足りん。あれでは良い様に使い潰されて終わるぞ」
「この期に及んで覚悟も出来ないようであれば、早めに潰された方が幸せです。ですが、素直に潰されるような人物でもないでしょう?」
何かが動き始めている、と言うのは情報部共通の認識だ。
元帥もそれは分かっている。このところの諜報関係の仕事は捗々しくない。
それが何をもたらすか。彼の覚悟がこの帝国にとって凶と出るか吉と出るか。
「さてどうかな……ぐずって寝たふりを続ける限りは、何れ潰れるだろう」
「では、必要な時には叩き起こせばいいだけではありませんか」
さらりと返せば、元帥は面白そうに肩越しにこちらを振り返った。
「お前が行くか?」
「それしか手がないとなれば。まぁ彼の周りには色々と面白い人物が揃っているようですし、喝は彼らが幾らでも入れるでしょう」
「そうだな。我々が心配するべきは小僧の先行きではなく、この帝国の未来だ」
強く鋭い瞳で、元帥が窓の外を睨む。
統帥本部長として、知力を尽くしてこの国を護る、と言う気概がある。
ただの貴族には無いその気迫が、彼をこの地位に押し上げ、部下達を従える。
「叛徒側に潜り込ませている人員を増やせ。フェザーンの狐には気付かれんようにな」
「はっ」
ちょうど従卒が運んできたコーヒーを受け取り、元帥に供してから命令を実行するために部屋を出た。
だから、副官であるのに、元帥の小さな言葉を聞き逃した。

「未来、か。このコーヒーのように苦いものでないことを祈るだけだな――――」


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ヾ(〃^∇^)ノわぁい♪
シュタインホフ元帥だ~~!!ヾ(〃^∇^)ノ
思わず顔文字を使ってしまうくらい嬉しい小話を有難うございます。
そうです!こういうのが読みたかったのですよ!!

ふふっ。このシュタインホフ、とってもいい味出してます。
先達として、若者に重責を負わせている現状への憤慨。
しっかり高評価しつつ、欠点までもちゃんと理解している。
それ故に感じるもどかしさ。
うん。ホント、いいお爺ちゃんです。しかも微妙にツンデレ!?

そしてこの小話から三ヵ月半後、エーリッヒの「攻め込ませます」という発言に彼の覚悟を感じ取る訳ですね!
こうして二人が協力しての諜報戦が始まるのでした♪

それにしても……
>「未来、か。このコーヒーのように苦いものでないことを祈るだけだな――――」

原作のような未来は、シュタインホフにとっては苦いものなんじゃないかなぁ……(汗)
KAIRI 2010/12/01(Wed)19:04:39 編集
Re;ほっと一息。
おおう、良かったです。
余りにもご希望と違ってたら、私のジジイモエもまだまだか、と思わなくてはならないところでした(笑)

>うん。ホント、いいお爺ちゃんです。しかも微妙にツンデレ!?

イメージとしては、まさにツンデレ。職人的な頑固親父っぽく。でも統帥本部長なので、ちゃんと柔軟さも持ち合わせている、かな。
ちなみにミュッケン爺ちゃんは孫にでろアマお祖父ちゃん、エーレン爺ちゃんは狸爺。リヒテン爺ちゃんは苦労人、と言うイメージです(笑)

>そしてこの小話から三ヵ月半後、エーリッヒの「攻め込ませます」という発言に彼の覚悟を感じ取る訳ですね!

そうそう、其処に至って欲しいな、と!
今の甘党小僧なら大丈夫か。ならば、ミュッケンベルガーに頼まれなくとも全力で事に当たるにきまっとる。若い者だけに責は負わせん!とシュタイン爺ちゃんが協力態勢に入るわけですね。
其処まで書くとさすがに冗長になるので出しませんでしたが、副官さんが私の出番がなくなりましたねぇ、と笑うところまでは考えてました。
出来れば、甘党閣下にも少しシュタイン爺ちゃんを見直して欲しいところです(笑)

原作未来は三長官の誰にとっても苦いかな、と。
甘党閣下のいる未来はどんなものなのか、楽しみですよね。目が離せません!
【2010/12/02 03:48 つくも】
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