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某所連載中の二次小説に対する、腐女子な愛を叫ぶ場所
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第123話ぐらい?9月21日の夜。甘党閣下とリューネさん。
ここしばらくが淡々とシリアスに陰謀ターンなので、エロい分を補給――ッ!(笑)
自己満足自己満足。
……日曜にアレコレかいてたマント祭りはこれでとりあえず最後かな。





軽い音を立ててドアが開く。
既に慣れた場所だ。薄暗い室内に躊躇せずに酒瓶片手に足を踏み入れた。
いつもは誰かしらが残っている司令長官室も、今日ばかりは皆どこかで祝杯を挙げているのだろう、にぎやかな喧騒に包まれているのが常の此処が、今は静寂に包まれている。
だが、一番奥の司令長官の執務机にだけは、小さな灯りと共に人影があった。
「閣下、流石に今日はもう止めたらどうです?」
「あいにくと色々仕事が溜まっていますから」
声を掛けながら歩み寄ると、視線もよこさずにヴァレンシュタイン元帥はいいのけた。
ちらりと傍らのソファーに目をやれば、脱ぎ捨てられた黒いマントと重たい飾りのついた礼装用の軍服の上着。そのほか祝いに貰っただろう様々な包みが適当に置かれている。
式典の後、戦勝記念の祝賀会が宮廷で行われていた。といっても下級の貴族や軍人は参列できない類のものだ。俺も顔は出したが、長居はせずにさっさと引き上げた。あんなに剣呑な雰囲気の場所ではヴァレンシュタインも気が休まるときがなかっただろう。
そんな気疲れする場所から引き上げたあと、1人でここに戻って仕事をしていたということか。
ヴァレリーが言っていた「書類を愛している」というのはあながち嘘じゃないのかも知れない。
とはいえ、あまり体力のないヴァレンシュタインが此処で無理をすると、倒れるのは目に見えている。
宇宙に出ているときはそれなりに休めたようだが、地上に戻ってからの彼は目の回るような忙しさだ、とヴァレリーが零していた。当然それに付き合っている副官の彼女も疲れているようで、今日は早めに帰って休んでいると護衛担当から聞いた。
「休む事も指揮官の仕事のうちだと思いますが?」
「必要な仕事です。働く義務がありますね」
つまりはまだ休むつもりは無い、と瞳が言っていた。
何処まで、ワーカホリックなのだろう。今日ぐらい休んでも誰も責めないだろうに。
「そんなに急ぐ仕事でもないでしょう?」
肩をすくめて顔を覗き込むように告げれば、流石にむっとしたのか顔をあげてコチラを睨んできた。
「昼間は何かと面会に来る方や、邪魔をする方が多いので仕事がはかどらないんですよ」
つまりは、俺のように邪魔をするヤツ、ということか。
その目の奥にある熾火を、俺は確認してにんまりと口元を緩めた。
まだ、彼の戦いは終わっちゃいない。今も牙を研ぎ澄まし、その爪は相手の喉元に迫らんと闇に潜んでいる。
普段は取り澄ました笑顔をしているが、どうやら俺は少しはこの臆病で狂った獣の閣下に近づいたらしい。少なくとも、その内面の不機嫌さをこれだけ見せても構わない、と思ってくれている程度には。
嬉しいような裏切ってみたいような、奇妙な誘惑に駆られる。
今回の会戦では宇宙艦隊だけで最後の雌雄が決してしまった。
血腥い肉弾戦が売りの俺は、地上で皇帝陛下のお守りをするしかなかった。正直、闘いの気配があるのに、力を振るえないというのは鬱憤がたまる。
けれど、彼のこの様子なら、まだまだ俺の力は必要とされるし…………彼はもっと狂う。
「邪魔はしたくないんですがね。フィッツシモンズ中佐より、日が変わったら仮眠室に叩き込め、と厳命を受けまして」
「……上官は誰だと思ってますか?」
「魅力的な御婦人に逆らうような愚行はいたしません」
そう真面目な顔で返せば、そういえば最初からそうでしたね……と彼は大きな溜め息をついた。
「じゃあ、せめてその時間まで邪魔しないで大人しくしていてください」
「はッ」
おどけて敬礼をすると、彼は嫌そうな顔をしてちらりと睨み、視線を手元に落とした。
コチラも残りの時間を有意義に過ごすべく、傍らのソファに座り込んで酒の栓を抜く。
グラスまでは無いので直に口を付けるが、行儀を云々言うような相手はここにはいないのがありがたい。
ツマミも持って来るべきだったか。
「…………其処の青い袋の分はここの司令部の女子職員たちから頂いたものなので、先に安全を確認済みですが、他の食べ物には手をつけないでくださいね」
ペンを走らせながらも、こちらの考えを読んだかのように彼が声を掛けてくる。
「他のは誰か意中の相手からのものですか?」
「ここに帰ってくる途中で渡された自称ファンの方々のものです。簡易の爆発物検査はしていますが、毒物検査まではまだしていないので」
顔色も変えずにさらりと言う。
隣にある可愛らしい袋たちが、なんとも不気味なものになって目に映る。
「物騒ですな」
「不本意ながら」
これが日常になると分かっていて選ばされた、覚悟した道だろうが、やはり嬉しくは無いのだろう。
彼が起こした波紋はまだ今は序の口だ。これからどんどん大きくなり、うねり、やがては大波となる。
「まだまだゆっくり寝られませんな」
「ええ。色々問題は山積していますしね……損害を受けた艦隊の再編も、金食い虫の捕虜の問題も如何にかしないといけませんが」
ふと、彼の視線が鋭く遠くを見つめる。
その先にあるのは同盟か、貴族達か、それとも運命という名の何か、か。
だがきっと其処は紅い未来が待っている。
俺はゆっくりと酒瓶を掲げて嗤った。
「何処までもお供しましょう」
この酒と血にかけて。
応えて、黒い獣は密やかに微笑んだ。

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