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某所連載中の二次小説に対する、腐女子な愛を叫ぶ場所
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たぶん第81~82話のあたり?
副題は……クレメンツさんってどんなひとー?(涙)





人生には何度か、思いもかけないような転機が訪れる。
俺の場合はあの日、第57会議室に向かったときから、すべてが変わった。
それまでは辺境で使い潰される、と思い込んでいた日々。
笑顔でいても、鬱屈する心は「どうして」と思わずにはいられなかった。
それがあの日。
決して得ることが出来ないと思っていた機会を得た。
思いがけない僚友に恵まれ掴んだ勝利…………ちがうな、かつての教え子に勝たせて貰ったのだ。
その結果、去年は思いもしなかったような艦隊司令官アルベルト・クレメンツ中将という立場にいる。
俺が自身だけで得た手柄だとは思わない。
あの時、同じように機会を与えられた仲間……ヴァレンシュタインに見出された仲間がいたからこその、今だ。
これから、本当の実力が試される。
新たな階級章に付け直した軍服を見ると、身の引き締まる思いがする。
果たして、この身はコレに相応しく在れるだろうか、と。
自身の身を引き換えにしてまで、俺達を守ろうとしてくれたヴァレンシュタインに、恥じない男でいなくてはならない。
あんなに年下の相手に、こうまで信頼を寄せている自分が少し可笑しい。
彼が士官学校に入ってきたとき、なんて幼い子供なんだろう、と思ったものだ。
彼が「国のために出来ることを」とそう言った時、正直この国はなんて事を子供に考えさせるのだ、と思った。教官としてはとても言える言葉ではなかったし、大人としてはもっと言えなかった。
余りにも幼いのでしばらくは心配して注意深く見ていたのだが、外見に反し、その精神は酷く大人びていた。逆に周りが子供に見えるくらいに、だ。
才能で周りを圧倒し、侮りを寄せ付けない強さもあった。
戦略科に進めば将来は出世間違いなしなのに、兵站などを志さざるを得ない彼の体質を悔やんだりもした。
ところがどうだ。
今や彼は俺の上官だ。
昔の同僚から伝え聞くところによると、士官学校では兵站科はすでに落ちこぼれ学科ではなく、新入生憧れの科だそうだ。
前線でも後方でも戦える、万能の司令官を目指す、という事らしい。
…………まあ、目指すだけなら罪は無い。本人にその資質が有るか無いかは4年間の内に気がつくだろう。少しでも兵站のことを知ってもらえれば、補給の無理な作戦案も減るだろうし。
地位が上がればあがるほど、その重要性と煩雑さは身に染みる。
そして、艦隊司令官に就任した今も進行形で思い知っている。
いかに戦うのが本分とはいえ、いま相手にするべきは同盟ではなく、書類と編成という手強い相手だ。
自身の艦隊と言う、夢見ていたものを持てたとはいえ、現実はそう甘くはない。
自身が手足のように扱う……信頼し背中を預け、戦場を共にする指揮下の者たちを見つけることが如何に困難か。
なんとか昔の教え子達の中で目を掛けていた相手を引き抜けたときにはほっとした。ヴァレンシュタインが上官でなければ、迷わず参謀に据えたのだが、ままならないものだ。

そうやって何とかひと息をついていたとき、オレンジ色の髪がゼーアドラーの廊下を跳ねる様に歩いてきた。
随分と機嫌が良い。
この間までは人事の書類を目の前に、頭を掻き毟って唸っていたものだが。
「どうした、ビッテンフェルト。随分ご機嫌ではないか」
同じように気がついたのだろう、ワーレンが声を掛けた。
こちらは未だに頭を掻き毟っているだけに、ちょっと不機嫌そうだ。
冷遇されていただけに、余り中央との繋がりもないし、平民ではろくな伝もない。他の面々も似たようなものだろう。
気分転換に、と相談に乗りがてら俺達はゼーアドラーに繰り出したのだ。当然ビッテンフェルトも誘っていて、後から合流するという返事を貰ってはいたのだが……
「うむ。頭を悩ませる事が解決したからな!卿らも早く終わらせてしまえ」
「卿が、もう?どうやって?」
訝しげにワーレンが胡乱な目つきでながめた。
「ヴァレンシュタイン閣下のおかげでな、良い奴等を紹介してもらえたのだ」
晴れ晴れとした顔で笑う。大きな声はことさらに店に響いた。
ざわめいていた店の中から話し声が消えた。
静かなBGMだけが、不自然に耳に付く。
「……ああ、そういえばあの最初の時、代わりの奴等を呼ぶ、と言っていたな」
思い出した場面を呟くと、ワーレンがはっと目を見開いた。
年若い上官に集められて不審と不安を抱いてもおかしくなかったあの時、拒否する奴など居ないだろうと思ったが、それでも多分最後の一押しは、他の誰かに譲られるのを指を銜えてみているのは我慢ならない、という思いだったかもしれない。
「つまり、われらと同じように閣下が目を付けていた奴がまだいる、ということか」
「あの面子が選りすぐりであっただろう事は明らかだが、当然絞るまでには幾人もその候補に上げていただろうな…………適正も癖も、恐ろしいほど調べ上げていたというのは、我等が何より実感しているだろう?」
「…………つまり、ヴァレンシュタイン閣下のポケットには、有能な人材リストがまだ残っている、ということだな」
こうしちゃ居られん、と勢いよくワーレンが立ち上がる。
隣で黙っていたアイゼナッハも同じように席を立つ。
居るのを忘れそうだったが、こいつも悩みは同じだ。そもそもどうやって艦隊に指示を出しているのか、未だに不思議でならない。
「この時間なら、閣下はまだ残って執務をしておられるだろう。申し訳ないが」
「ああ、早く行くといい。あんまり遅いと副官殿に睨まれるからな」
ひらひらと手を振って送り出す。
「すまん。そういうわけだからビッテンフェルト中将、卿の司令部決定祝いに俺達の酒代を奢らせてやろう」
「は?」
二人はすれ違い様に肩を軽く叩いて、足早に店を出て行った。
「祝いで俺が奢るのか……?」
「諦めろ。抜け駆けした卿の自業自得だ」
小さく笑って席を勧める。
とりあえず、何とかこの問題にもけりが付きそうだ。
再び戻ってきたざわめきの中、グラスを掲げて小さく「我等の未来に乾杯」と呟いた。

後日、この顛末が他の艦隊司令官達にも知られ、副司令長官室に押しかけるという事態が発生したらしい。
……すまん、ヴァレンシュタイン。いらない仕事を増やしてしまったようだ。
代わりに他の事で返すから、睨まないでくれ…………。

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無題
こちらの小話のおかげでクレメンツ好き度がアップしてしまいました(笑)

それにしてもゼーアドラー!
帝国軍内の噂の発信地化してますね。

>ざわめいていた店の中から話し声が消えた。
>再び戻ってきたざわめきの中~~

この間、周囲にいた客は、皆さん聞き耳を立てていたのでしょうか。
時期的に、各艦隊司令部の人事は注目の的になっているはず。
そこへ持ってきて、ビッテンフェルトのこの発言!
「再び戻ってきたざわめき」の中で語られている内容を想像するだけで、1~2時間は時間を潰せそうです。
KAIRI 2010/11/24(Wed)12:45:27 編集
Re:
クレメンツさん、何気に美味しい位置にいますよねー(笑)
問題は、まだあんまり描写されてない事でしょうか……妄想だけが先走るッ!

きっとゼーアドラーは裏の司令部です(笑)……なんてトコまではいかないでしょうが、議会もろくにないあの世界、原作によるとパーティーなんかで重要な話が纏まるらしいですからね~。
其処に甘党閣下の名前が出れば、皆さん興味津々でしょう。ビッテン君の声だし(笑)新艦隊の提督たちも注目されてるし。最初からちら見されてただろーなと思うのです。
さらに「閣下の人事リスト」なんて聞いたらそりゃあもう、噂の的ですね!
誰が上がってるのか、とか俺は入ってるだろうか、とか。
次の大抜擢は誰だ?みたいなトトカルチョもあり?
翌日は人事部の前辺りに人が張り付いてそーですね!(笑)
【2010/11/25 03:41 つくも】
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